こんにちは、T研究員です。
みなさんは、道路(一般道、高速道路)を走行する車両の詳細な走行経路や地点毎の速度や急制動などの情報を知りたいと思ったことはないでしょうか?
今回ご紹介するのは、国土交通省を運用するETC2.0プローブデータ(以降、「ETC2.0データ」とする。)についてです。
ETC2.0プローブデータについては、情報量が多いため今回は「その①:データ概要」について紹介します。
■データ概要
データ名称 | ETC2.0プローブデータ |
---|---|
運営主体 | 国土交通省 |
公表/非公表 | 非公表(共同事業や学術研究で利用可) |
費用 | ― |
更新頻度 | 日別時間帯別データ(分単位) |
データ項目 | 車両情報、走行履歴情報、挙動履歴情報 |
対象 | 高速道路・一般道利用車両 |
データ種類 | サンプルデータ(高速利用車の20%)増加傾向 |
URL | ― |
皆さんは高速道路を利用する際にETCシステムを利用されていると思いますが、その車載機(システム)が、近年ETC2.0として新しくなっていることはご存じでしょうか。
ETCシステムがETC2.0にアップデートされることにより、渋滞の迂回ルートを教えてくれたり、安全運転をサポートしたり、災害時の適切な誘導をしてくれたり様々なサービスを受けることができるようになります。また、それと同時に今までのETCシステムから収集されていたETCログデータ(過去記事参照)よりも、より多くの情報を収集できるようになりました。
このETC2.0 データは、ETC2.0 専用の車載機で車両の走行履歴等(時刻、緯度・経度、道路種別等)を記録し、その情報がITSスポットおよび経路情報収集装置を通過する際にアップリンクされることにより、データを収集する仕組みとなっており、その情報を用いて上記のサービスが提供されています。
出典:国土交通省「ETC2.0 プローブデータによる交通状況分析について」
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001346436.pdf
また、ITSスポットおよび経路情報収集装置は、高速道路のみならず一般道にも設置されており(高速道路約1,700箇所、直轄国道約1,900箇所)、高速道路のみならず一般道の交通状況も把握することができるデータとなっています。
出典:ETC総合情報ポータルサイト
https://www.go-etc.jp/etc2/
そのため、今までのETCログデータでは把握することができなかった詳細な走行経路および、一般道の交通動向を把握することができるデータとなっています。
ETC2. 0のデータ項目は、車両情報と走行履歴情報と挙動履歴情報となっています。生データは点データですが、それをマップマッチング(道路と紐づけて集計)してリンク単位に加工したデータなど、様々な様式でデータは整理されています。
※ヨー角速度や加速度により、急ブレーキ(ヒヤリハット)や急ハンドルなどの発生状況を把握することができる。
出典:国土交通省「ETC2.0を取り巻く現状について」
https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/keizai_senryaku/pdf11/01.pdf
ここまでの話を聞くと、データにより「だれがどこを通ってどこに行ったか」といった個人情報の問題があるのではないかと思われるかもしれませんが、走行開始地点や走行終了地点(エンジンON/OFF地点から概ね半径500mの走行履歴)など、個人情報に関わる情報は削除されており、個人の行動を把握することができないデータとなっております。(データをアップリンクする前の車載機の中で起終点に関わるデータは削除されるため、統合サーバーに一時的に記録されることもない。※企業承諾済みの一部バス等の起終点情報は削除されず記録されている。)
出典:国土交通省「全国料金・大都市圏料金について」
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001390313.pdf
このように様々な用途に活用できる可能性のあるETC2. 0データデータですが、ETCログデータと異なり、ETC2.0自体の普及率が低いため、全数データではなくサンプルデータとなっています。また、ITSスポットおよび経路情報収集装置もすべての一般道路に設置されているわけではないため、すべての道路の交通状況を把握することはできません。今後ETC2.0 の普及率が上昇し、またすべての道路にITSスポットおよび経路情報収集装置が設置されることが予想されるため、発展途上のデータとなっています。
※交通量等の全数情報を把握することはできませんが、速度や走行経路、急ブレーキの発生状況などの傾向を把握することに適したデータといえます。
出典:国土交通省「ETC2.0を取り巻く現状について」
https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/keizai_senryaku/pdf11/01.pdf
このETC2.0データですが、残念ながら公表はされていません。
しかし、道路のみならずデータの活用方法を模索するために、民間企業や大学等と積極的に連携が行われています。
出典:国土交通省「ETC2.0を取り巻く現状について」
https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/keizai_senryaku/pdf11/01.pdf
■最後に
今回は、高速道路および一般道走行車両の走行履歴等を把握することのできるETC2.0 データについて、「その①データ概要」をご紹介いたしました。
上記で説明しましたように、ETC2.0 データは非常に可能性のあるデータですが、まだまだ普及率が低く発展途上のデータとなっています。ETC2.0 については、一部で必要ないなどと言われていますが、ETC2.0によりドライバーがより良い交通情報を入手できるようになると同時に、道路計画の検討やデータを活用した新たなサービス展開など、様々なメリットがあります。今後さらにETC2.0 が普及していくことが望まれます。
また、このETC2.0 データに関しては、国土交通省だけが活用するのではなく、様々な企業データとの協調が模索されています。このように、1つのデータに対し、様々なアイデアやデータが組み合わさることにより、データの可能性は飛躍的に増加すると考えます。このような、データを共有し、共に生かすような流れがどんどん広がっていくことを望みます。
参考:ETC2.0の活用について