こんにちは、T研究員です。
みなさんは、高速道路の交通量や走行経路などを知りたいと思ったことはないでしょうか?
今回ご紹介するのは、NEXCOや都市高速各社が収集するETCログデータ(以降、「ETCログ」とする。)についてです。
■データ概要
ETCログは、みなさんが高速道路を利用する際に利用するETCシステムの情報を利用して収集されるデータです。そのため、網羅性が高く、高速道路利用者の93.2%(令和3年8月時点)となっています。
出典:国土交通省「ETCの利用状況」
https://www.mlit.go.jp/road/yuryo/etc/riyou/index.html
ETCログは、高速道路利用者が料金所ゲートを通過する際に、料金の支払いに関する情報として収集され、高速道路会社のサーバーに保存されます。
あくまで、料金の支払いのための情報のため、収集される情報は限られます。
また、その内クレジットカード情報などの個人を特定できる情報が除かれたデータがETCログのデータになります。
収録情報
・車載器ID
・利用車種
・入口日時・出口日時
・入口IC・出口IC
・利用料金
出典:国土交通省「全国料金・大都市圏料金について」
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001390313.pdf
ETCログは公表されておらず、主に高速道路各社および所管官庁である国土交通省ないでしが活用されていません。ですが、高速道路会社や国土交通省からの発注業務や学術研究等でも活用されており、アプローチ次第では利用可能なデータとなっています。
データ名称 | ETCログデータ |
---|---|
運営主体 | 高速道路各社(ネクスコ、首都高など) |
公表/非公表 | 非公表(発注・共同事業や学術研究で利用可) |
費用 | ― |
更新頻度 | 日別時間帯別データ |
データ項目 | 車載器ID、利用車種、入口日時、出口日時、入口IC、出口IC、利用料金 |
対象 | 高速道路利用車 |
データ種類 | 全数データ(高速利用車の93%) |
URL | ― |
■データの留意点
ETCログは、データフォーマットは同じですが、各社が個別に収集している情報のため、データのエリア連続性はありません。(ネクスコの高速道路から首都高などの都市高速に乗る際は、一度ネクスコの料金所を出て、首都高の料金所から乗りなおすようにデータもそこで一度途切れてしまします。)
そのため、都市高速を通過または跨ぐような分析には特殊な分析が必要となります。この分析は高速道路会社でも行うことができず、私が知る限りある1社のコンサルタントが行っています。
出典:国土交通省「全国料金・大都市圏料金について」
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001390313.pdf
また、高速道路のデータのため、一般道の利用状況や乗継情報についてはわかりません。
■活用事例
ETCログは、基本的には高速道路の出入りの情報のため、前回紹介した高速トラカンのような区間や断面の交通量などの分析には適してはいません。一方で、高速トラカンデータでは把握できない、ICの乗降量やOD交通量などの分析に適したデータとなっています。
そのため、ETCログを用いて下記のようにIC間や路線間の交通量を把握することができます。また、条件を噛ますことで、それらの車両がどのようなルートを通ったかということも分析することが可能です。
出典:国土交通省「R1年12月25日記者発表資料」
https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000765059.pdf
また、ICの出入時間もわかるため、IC間の所要時間も把握することが可能です。
今回事例として示しておりませんが、車載機IDを用いて観光地の滞在時間分析なども行うことが可能です(例:舞浜ICの降車時間(来る)と乗車時間(帰り)の間時間を集計)
出典:国土交通省「H27年5月27日記者発表資料」
https://www.mlit.go.jp/common/001090854.pdf
これらの情報を組み合わせることによって、観光客の発着地などの分析を行うことが可能です。
出典:国土交通省「H27年5月27日記者発表資料」
https://www.mlit.go.jp/common/001090854.pdf
■新たな活用の可能性
今回は、高速道路利用車両の動きを把握することができるETCログデータについてご紹介いたしました。ETCログは主にICの乗降情報のデータになります。そのため、IC付近に立地する観光地や商店の商圏分析に利用できると考えます。ICを利用する観光客・買い物客がどこから来て、何時台に多く来ているのかを把握することで、そのエリアに対して効率的な広告を打つことが考えられます。
また、IC乗降情報を知ることにより、ドライバーを対象としたサービス(コンビニ、飲食、ガソリンスタンド等)の立地計画策定の材料としての利用も考えられます。
新たな活用例
・観光地・商店の商圏分析
・IC周辺の店舗立地計画 など。
最後に、ETCログデータは、高速道路利用車両のほぼ全数の行動を把握することのできる企業なデータです。しかし、現状は高速道路会社と国土交通省にしか利用されていない状況であるため、公表され様々な人が利用可能なデータになることが求められます。