建設工事受注動態統計調査不正問題 その② 統計の信頼性の担保について

建設工事受注動態統計調査不正問題 その② 統計の信頼性の担保について

こんにちは、T研究員です。

先日、国土交通省が国の基幹統計である「建設工事受注動態統計調査」の結果を不正に改ざんした「事件・問題」がありました。

そこで、日本の統計はどうなっているのか、どのように信頼性が担保されているのかをまとめました。(手法などの方法論ではなく、制度的な面で)

今回はその第2回で、統計を所管する総務省のとりくみについてです。

■日本の統計

日本の統計は、総務省統計局が国勢の基本に関する統計(国勢調査など)を作成し、各府省が所管行政と密接に関連する統計を作成するなど分散して統計が作成されています。

統計に関しては、統計局が政策作成・計画・調査等すべて取り扱っていると思われがちですが、統計局はあくまで国勢に関する統計調査の実施・統計技術開発・統計の利用促進が行われているだけで、その他の政策作成や他省庁との調整などは総務省(政策統括官:統計基準担当)が行っています。

出典:総務省統計局、日本の未来をつくる「統計」‐統計局等業務案内
   https://www.stat.go.jp/info/guide/pamphlet/index.html

■ 総務省(政策統括官:統計基準担当)の役割

上記のように日本の統計は、統計局以外にも各省庁で分散して行われています。他省庁が統計調査を行う場合は、統計法の規定により、あらかじめ総務大臣の審査・承認を受ける必要があります。

審査では、統計調査が合理的かつ妥当な設計になっているか、他の調査と過度の重複がないかなどの確認を行われる。また、調査対象になった方々の負担軽減を図るようにも努められています。

この審査では、各省庁は実施する統計の目的・調査内容・調査方法について、細かく確認されており、この審査をもって、統計の正確性と効率性を確保しているといえます。

■ 課題

この審査は、あくまで他の統計の調査項目との重複はないか、統計精度は妥当か(標本数、標本抽出方法等)といった、調査の事前の確認にとどまります。

そのため、調査結果がどうであったかの内容のチェックや確認は行われて追わず、今回の「建設工事受注動態統計調査」や2019年の「毎月勤労統計調査」のような不正を防ぐことはできない体制となっています。

※統計の調査結果は、一般的に調査を行った機関及び調査を受注した企業が行います。また、統計調査を行うにあたり学識者を含む実施委員会等が設置されることがあり、その中でも確認が行われます。しかし、実施委員会では大まかな結果の確認のみで、集計のチェックは行われないため、調査機関内々での確認しか行われていないのが現状です。

■今後の統計調査のあり方

今回は、統計の信頼性担保の仕組みを紹介しました。日本の統計は、統計実施までは統計局が細かく確認し信頼性の担保を行っているものの、調査結果・とりまとめ結果に関しては、各調査機関に任せきりで、外部の確認があまり入っていないのが現状です。

本来であればと調査結果の確認にこそ注力すべきです。そのため、統計調査の確認を行う外部組織の設置、およびその体制・予算確保のための法廷整備が必要と考えます。

統計調査の集計およびとりまとめをなるべく自動化(WEB回答、紙回答の画像読み込み、プログラムによる集計など)し、人の手が入らないようにすべきと考えます。人の手が入るとどうしてもミスや改ざんのリスクが高まります。また、自動化で集計を行った場合、トラブルがあった際にログで原因の確認を行い改善することが可能です。

今回の統計の不正改ざんによる影響は、基幹統計を基にした将来予測や政策決定など国策に大きな影響を与え、日本の統計の信頼を大きく損なうことになりました。

今後このようなことが起こらないように、徹底的な対策が行われることが望まれます。

その他カテゴリの最新記事