国勢調査の危機 今後の統計について

国勢調査の危機 今後の統計について

こんにちは、T研究員です。

今回は、国勢調査に関して気になる出来事があったのでご紹介します。また、この問題は国勢調査に限らずすべての統計やビッグデータの作成にかかわることと思い、整理いたしました。

■国勢調査、ネット回答と郵送を延長

各報道によると、国勢調査の期限が10月7日から20日に延長されたとのことです。
今までの調査では、回答されていない家庭に訪問し回答を促すことをしてきましたが、今回は新型コロナにより、それが難しいいことも影響しているかもしれませんが、このようなことは過去にはなく大きな出来事となっています。

「総務省は、7日までだった国勢調査の回答期限を、20日まで延長することを決めた。6日時点の回収率が53・1%と低調なためだ。」

出典:朝日新聞デジタル「国勢調査、回答期限を20日まで延長 回収率低調で」、https://www.asahi.com/articles/ASNB77JQQNB7ULFA039.html

●回答の意思表示

また、回答を終えた人の中には、信じられないことに回答用紙を黒塗りしたり、意図的に回答を行わないなど調査を妨害する人もいるようです。


■正確な統計が行えない場合の問題

このように今回の調査では、国勢調査を妨害したり・回答しない人が多くいることが浮き彫りとなりました。(まだ、最終的な調査結果(回答率)についてはわかりませんが、従来と比べ相当低くなる可能性があると考えます。)

このように国勢調査の回答率が低くなると一体どのようの問題が考えられるのでしょうか。

〇結果的に自分のためにならない

・まず調査制度の低下が挙げられます。国勢調査は主に国や自治体の政策立案に使われます。そのため、調査結果が良くないと、例えば若者の回答が少ないと回答割合の多い老人向けの政策が多くなり、大家族が面倒くさがって回答を怠ると大家族はいないとみなされ単身世帯向けの政策が多くなるなど自身に対する政策が行われなくなります。

〇日本の調査の信頼性

・以前はよく〇国の統計は信用できない、自分の有利なように操作しているといわれていましたが、今回のように多くの人が調査に協力しないと、同様の評価を各国からされかねません。大げさと思うかもしれませんが、統計は国を示す最も基礎的な情報であり、それが不明確である国は信頼などされません。

〇調査費の増加、厳法化・厳罰化

・今回の調査期間の延長は、その分余分に費用が掛かります。また黒塗りなどの不明確な回答を行うとそのチェックや確認作業のために多くの手間がかかります。(私も別の調査でチェック等を体験したことがありますが、非常に大変です。)

・また、回答率が今後減るようであれば、調査に関する法的権限や厳罰が強化されることも予想され、ますます規制が多く住みづらい社会になる恐れがあります。

■問題の根底

上記のように調査の回答が減っていますが、回答方法は回を追うごとに簡単になっています。それなのになぜ回答率は下がるのでしょうか。

ここからは、私の私見になるのですが、これは政治に似たところがあり、調査が「何の役に立ち」「自分たちの社会にどのような影響があるのか」ということが分からず、主体性が欠けているからだと考えます。

調査が、何に使われているのかが分からないために回答を忘れ、自分たちの社会にどのような影響があるのかが分からないため、安易に回答を妨害・拒否するのだと考えられます。

■今後の調査の在り方について

上記のような問題点は今後どのような調査でも発生する恐れがあります。このような問題を避ける方法として3つ方法が考えられます。

1.各調査の重要性を周知

上記でも述べたように、人々が調査の意味や重要性を知らないことが、調査の回答率の低下を招いていると考えます。今でも調査についてはニュース等で広報されていますが、昨今は解説番組やクイズ番組が多くあるのでそういったメディアのでの広報やテレビ以外にも情報媒体が多様化しているので、そういった媒体の活用が考えられます。

  国勢調査2020公式twitter:https://twitter.com/kokusei2020
  国勢調査2020公式instagram:https://www.instagram.com/kokusei2020/

国勢調査も昔は5年に1度ということでお祭り騒ぎだったと記録されています。そのようなムーブメントを作ることが重要だと考えます。

100年前はお祭り騒ぎ
第1回目の国勢調査は、100年前の大正9年に行われた。
明治時代に入って以降、先人たちが、欧米諸国が先行して実施していた統計
調査の
日本への導入の必要性を訴え、数十年にわたって尽力を続けた末の実
現となった。

第1回調査は、「これで一等国の仲間入りだ」と国中がお祭り騒ぎになったという。
政府は、「国勢調査は文明国の鏡」、「此の調べに漏れては国民の恥です」といった
ポスターを次々と作成して、国民への浸透を図るとともに、協力を呼びかけた。


出典:NHK政治マガジン、「国勢調査が「存亡の危機」に!?」,2020年9月30日,
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/45504.html

2.回答方法の多様化

今回の国勢調査のインターネット回答は、非常に簡単で驚きがありました。それ以上に最近驚いたのは、厚生労働省とLineによる新型コロナによる調査です。コロナの調査は、目的が明確で回答方法も普段使用しているツールを用いたものであり、統計が非常に身近にあった瞬間だと思いました。あのように、多彩な媒体を使用した調査というのも今後考えていくベき調査方法ではないかと思います。


3.マイナンバーカードの活用

また、もうひとつ賛否がある方法ですが、マイナンバーカードにすべての情報(戸籍情報、就労状況、銀行情報など)を紐づけることも、方法として考えられます。この方法だと調査を行うまでもなく正確な統計を作成することができます。


おわりに

今回は、国勢調査の問題を通して、統計の在り方について考えてみました。
今後の統計の在り方については様々な方法があると思いますが、時代に合った調査方法についても常に考えていく必要があります。

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