こんにちは、T研究員です。
みなさんは、各地域の企業の活動状況について知りたいと思ったことはないでしょうか?
今回ご紹介するのは、経済産業省の経済センサスのデータについてです。
■データ概要
経済センサスは経済産業省で運用されている、国の最も重要な基幹統計の一つであり、誰でも利用することができる統計データです。経済センサスは個人営業の農水林業とその他の生活関連サービス業、外国公務に属する事業所を除く全事業所を対象に行われている調査で、基礎調査、活動調査がそれぞれ5年毎に実施されています。
〇大変革のあった統計、経済センサス
経済センサスが始まったのは比較的新しく、H21年に第1回基礎調査、H24年に第1回活動調査が行われました。実は、この経済センサスは、「事業所・企業統計調査」「サービス業基本調査」「本邦鉱業のすう勢調査」が統廃合された調査であり、かつ「商業統計調査」「工業統計調査」「特定サービス産業実態調査」も経済センサスで代用されるなど、日本の統計の中でもかなり大きな統合・再編が行われた調査となっています。
この大きな再編により、今まで縦割りで行われてきた調査が効率的になったり、捉えることができなかった非店舗型の企業(IT等)や多様化するサービス業の動向を正確に把握できるようになるなどのメリットがあった、一方で、過去の統計との連続性がなくなったり、商業統計においても廃止こそされなかったものの、一部結果が経済センサに代用され、それに伴い調査項目も今までと変化してしまっている。
そのため、過去の調査との時系列比較は注意が必要です。
大きな変更
・調査方法の変更(本社一括調査の導入など)
・経済センサスに合わせた産業分類の変更(管理,補助的経済活動を行う事業所の追加、
「その他の飲食料品小売業」の一部が「持ち帰り飲食サービス業」及び「配達飲食サービス業」に変更)
・商業独自の調査項目(商品販売額、売場面積、営業時間等)の数値がない事業所が存在
出典:経済産業省,「商業統計 平成26年商業統計調査結果について」,
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/syougyo/result-2.html
〇意外と知らない活動調査と基礎調査の違い
経済センサスには前述のとおり基礎調査と活動調査の2種類の調査が行われています。
それぞれ、異なる目的で調査が行われており、調査項目も調査によって異なります。
基礎調査
(目 的)事業所・企業の属性など、基本的な事項の把握に重点を置いた調査
(調査項目)●名称 ●所在地 ●活動状態 ●従業者数 ●年間総売上(収入)金額 ●事業の種類・業態 ●開設時期 ●経営組織 ●資本金等の額 ●法人番号 ●支所等の有無
活動調査
(目 的)売上・費用、設備投資など、企業の経済活動に重点を置いた調査
(調査項目)基礎調査の調査項目に加え、●売上金額 ●費用額 ●設備投資の有無 ●土地、建物の所有の有無 [製造業: ●原材料、燃料、電力の使用額 ●有形固定資産 ●製造品出荷額、在庫額][ 卸売業・小売業: ●商品販売額 ●商品手持額 ●売場面積 ●営業時間 ●店舗形態サービス業 ●施設・店舗等形態 ●取扱件数、入場者数、利用者数]
※調査項目は、業種・経営組織によって異なります。
より詳しい調査項目は以下の参照
基礎調査:https://www.stat.go.jp/data/e-census/2019/gaiyou.html
活動調査:https://www.stat.go.jp/data/e-census/2016/gaiyo.html
また、活動調査は基礎調査で行われている「国及び地方公共団体の事業所」の調査は行われていないので、事業所などの時系列比較には注意が必要です。
(参考:民営事業所に絞る、(参考)国・地方公共団体の事業所を含む事業所数-全国を活用する等の対応が必要)
出典:総務省, 「国・地方公共団体の事業所を含む事業所数について」,
https://www.stat.go.jp/data/e-census/2016/kekka/sanko1.html
■活用事例
経済センサスは文字どおり、日本のほぼ全ての企業の経済状況を調査したデータであり、調査数も(総事業所数:H2⑥基礎調査委)409万8千企業と前回紹介した、東京商工リサーチの約150万企業と比べても、かなり多くの情報を有したデータです。一方で、データは市町村などの行政単位の集計値(一部は秘匿)となっている。
そのため、活用事例の多くは、行政の施策検討などの活用となっています。
また、前回紹介した国勢調査のデータと同様に経済センサスも4次メッシュ(500m)単位でも、地図で見る統計(統計GIS)という項目で、データ項目は限られるものの誰でもデータが活用できるよう公表されています。
出典:e-Stat,「地図で見る統計(統計GIS)」
https://www.e-stat.go.jp/gis/statmap-search?page=1&type=1&toukeiCode=00200552
出典:T研究員作成(H26 経済センサス)
■新たな活用の可能性
経済センサスのデータも国勢調査と同様に最も大きな特徴は全数調査であるという点です。そのため、前回の東京商工リサーチ等の標本データをより事態にあった結果に近づけるための補正係数等を作成するのに大いに役立ちます。このように貴重なデータを修している経済センサスですが、5年に一度の調査であり、そのデータを用いて何かを分析、マーケティングを行うことは非常に困難です。しかし、前述のとおり、全数調査であるためその時々の正確な数値を把握することが可能です。そのため、今後は、様々な方法や定義で収集・作成されるビッグデータの統一的な基準、各データの基準を揃えるための目安としての活用のされ方に変わってくるのではないかと考えます。
新たな活用例
・各種データの捕捉率の確認
・各種データの補正係数の作成 など。